相良研究室


指導基本方針

 ラットから調製した神経細胞とグリア細胞を使って、抗酸化機構を調べる実験を行う。学生自身が細胞の培養を行うが、必要な手技は研究室配属後のトレーニングにより教授する。
 基礎研究なので、正解がわかっているわけではない。毎回の実験は、未知への挑戦だと思って取り組んでほしい。なにが見つかるかはわからないが、実験者は新知見の第一発見者になる可能性がある。

Somewhere, something incredible is waiting to be known. (By Carl Sagan)

研究領域(主な指導領域)

  1. 中枢神経系の抗酸化作用の生理化学的研究
    募集人数:学科を問わず 1~2名
    地球上の生物は常に酸素の酸化力に脅かされている(酸化ストレス)。細胞は抗酸化力によってそれに対抗しているが,その中心物質は細胞内のグルタチオンである。現在,主に培養神経細胞とグリア細胞を用いる研究を3つ計画している。(1)細胞内のグルタチオン量を人為的に変化させて,酸化ストレスに対する抵抗力の変化をみる。(2)食物などに含まれる天然抗酸化物質の中にはグルタチオン代謝系などの抗酸化酵素の発現を亢進させるものがあるので、その誘導機構を分子生物学的手法を用いて調べる。(3)糖尿病など神経変性疾患がみられる病態の発症機構をグルタチオン代謝の観点から調べる。(4)抗てんかん薬であるバルプロ酸は神経伝達物質の動態に作用することで薬理効果を発揮している。しかし、近年の研究では、バルプロ酸は神経細胞だけでなくグリア細胞にも作用し、グルタミン酸とGABAの輸送活性に影響することが報告されている。グルタミン酸輸送体の一部は抗酸化物質の前駆体の輸送にも寄与しているので、バルプロ酸が抗酸化活性に影響している可能性がある。また、バルプロ酸と併用されることが多いカルニチンが神経細胞を保護する事例も報告されている。このような抗てんかん薬の薬理効果が抗酸化活性と関係あるかどうかを調べる。
  2. 中枢神経系の抗酸化機構の神経・グリア相関
    募集人数:学科を問わず 1~2名
    生体の主要な抗酸化物質であるグルタチオンの中枢での分布はグリア細胞にかたよっている。神経細胞は酸化的ストレスに脆弱で、グリア細胞により保護されていると考えられているが詳細な機構は不明のままである。解明の手がかりとして、グルタチオン合成の前駆アミノ酸であるシステインの動態を蛍光標識法と放射性同位体によるトレーサ法により解析している。現在、グリア細胞から神経細胞にシステインを輸送するタンパク質を同定するための研究を4つ計画している。(1)グリア細胞内のシステイン量を人為的に変化させて,システインの放出速度を調べて酵素学的な性質を明らかにする。(2)グリア細胞内の他のアミノ酸量を変化させシステイン放出速度に対する阻害効果を調べ、システインの放出を担っている輸送タンパク質を同定する。(3)細胞外にアミノ酸を添加したときの阻害効果を調べることにより、神経細胞のシステイン取り込みを担っている輸送体を同定する。(4)神経細胞の分化にともなう輸送体の発現の変化を遺伝子の発現を調べることにより明らかにする。

備考など
  いずれのテーマも実験は細胞の増殖に合わせて行う必要があるので,主に放課後や春季・夏季休暇中に行うことになります。研究に対して真剣に取り組む学生でないと勤まりませんので、配属前に十分相談してください。
  興味のある学生は研究室11または実習棟2・2階・生化学実験室まで訪問してください。